朝、目覚めた瞬間から気持ちが沈んでいる日がありました。「何もしたくない」「話したくない」「無性に不安」。そんな朝にアプリを開くと、排卵予定日の前日であることがほとんど ― 毎月やってくる”この感じ”にパターンがあると気づいたのが、私とハーブの付き合いの始まりです。
若い頃は月経前だけだった不調が、40代に入ると排卵期から始まるように。病院に行くほどではないけれど、気分も体も確実に揺れている。無理に元気を出すよりも「整える」ことが必要なのだと感じて、私は植物の力を借りるようになりました。
この記事は、その記録の中から「女性の巡りと美しさ」に寄り添う11のハーブをまとめた図鑑です。前半は月のリズムとゆらぎに、中盤は血と巡りに、後半は肌の透明感と美容に。祖母から受け継いだサフランの一杯や、手作りの紫根オイルの話も、そのまま収めました。
- この図鑑に登場する11のハーブ
- 1. ゆらぎの日の基本ブレンド ― チェストツリー×パッションフラワー×レモンバーム
- 2. ラズベリーリーフ ― 女性のめぐりの、トニックハーブ
- 3. サフラン ― 祖母から受け継いだ、黄色い処方箋
- 4. アンジェリカ ― 巡らせ、立て直す”根の力”
- 5. ネトル ― 血液を澄ませる”緑のちから”
- 6. ハイビスカス ― 40代の自然派スポーツドリンク
- 7. ルイボス ― 不老長寿のアフリカ茶
- 8. ザクロ×ラズベリーリーフ ― エラグ酸で、内側から透明感
- 9. ヒース ― くすみに寄り添う、アルブチンの花
- 10. ホーステイル(スギナ) ― 肌・髪・爪を育てる、シリカの野草
- 11. 紫根 ― 手作りオイルで、肌と心を整える
- 使うときの共通の注意点
- まとめ ― 巡りを整えることは、自分を育てること
この図鑑に登場する11のハーブ
| ハーブ | ひとことで言うと |
|---|---|
| ゆらぎのブレンド | 排卵日前の”あの感じ”に、私の基本の一杯 |
| ラズベリーリーフ | 女性のめぐりに寄り添うトニックハーブ |
| サフラン | 祖母から受け継いだ、黄色い処方箋 |
| アンジェリカ | 巡らせ、立て直す”根の力” |
| ネトル | 血液を澄ませる”緑のちから” |
| ハイビスカス | 自然派スポーツドリンク |
| ルイボス | 不老長寿のアフリカ茶 |
| ザクロ×ラズベリーリーフ | エラグ酸で内側から透明感 |
| ヒース | くすみに寄り添うアルブチンの花 |
| ホーステイル(スギナ) | 肌・髪・爪を育てるシリカ |
| 紫根 | 手作りオイルで、肌と心を整える |
第1部 月のリズムと、ゆらぎに寄り添う
1. ゆらぎの日の基本ブレンド ― チェストツリー×パッションフラワー×レモンバーム
まずは、私の”基本の一杯”から。排卵日前のゆらぎを感じたら、この3種のブレンドティーを淹れます。
チェストツリーは、女性ホルモンのバランスをやさしく整えるとされ、排卵期やPMS様症状の緩和をサポートしてくれるハーブ。パッションフラワーはイライラや緊張、不安感に。レモンバームは神経を落ち着け、気持ちのざわつきを整えてくれます。
ハーブの力は、即効性のある薬とは違います。でも「今の自分に必要なものを知っている」と感じられることは、それだけで十分な癒しになる。「またこの感じだ」と落ち込むのではなく、「整える時間をつくろう」と思えるようになったこと ― それが、私にとっての小さな進歩でした。
2. ラズベリーリーフ ― 女性のめぐりの、トニックハーブ
ヨーロッパで「出産準備のお茶」として古くから親しまれてきた、バラ科のハーブです。子宮や骨盤まわりの筋肉を整えるとされる働きがあり、伝統的なハーブ療法では”トニックハーブ(調整系ハーブ)”として扱われています。
私はPMSや生理時の不快感が気になるとき、1日1〜2杯を目安に取り入れています。ほんのり草のような、やさしい風味。ホルモンバランスが乱れがちな40代の私にとって、「月のサイクルを整える、心のひと呼吸」のような存在です。
ノンカフェインなので夜にもぴったり。草っぽさが気になる方は、ペパーミントですっきりと、ジンジャーで冷え対策に、ルイボスやローズヒップと合わせて美容の一杯に。ただし妊娠初期(特に12週まで)は避けるべきとされており、妊娠中の使用は必ず医師や助産師に相談を。持病のある方も慎重に、少量から試してください。
3. サフラン ― 祖母から受け継いだ、黄色い処方箋
幼い頃から、サフランの黄色い温もりは、祖母と母のやさしい記憶と一緒に私の暮らしに溶け込んでいました。母方の祖母が淹れてくれる香り高い一杯のサフランティーは、いつも心をふわりとほどいてくれたものです。
サフランはクレオパトラも愛したスパイスとして知られますが、主成分のクロシンやサフラナールはセロトニンの伝達を助け、心のバランスを整える働きがあるとされています。更年期前後の女性の不安や気分の落ち込みへの働きも研究されており、「気持ちを明るくするスパイス」として注目されています。
私の取り入れ方:「今日はゆっくり整えたいな」と感じる朝は、祖母のレシピを受け継いだサフランミルクティー。温めたミルクにほんの数本のサフランを浮かべると、黄色い色が溶けていく瞬間、目にも心にも温かさが染み渡ります。忙しい日はサフランごはんに。香りの癒しが欲しい夜は、お風呂に数本浮かべて「今日も一日お疲れさま」のご褒美に。
量は1日数本程度が安心です。通経作用があるとされるため、妊娠中は避けてください。
4. アンジェリカ ― 巡らせ、立て直す”根の力”
学名 Angelica archangelica(セリ科)。名前の由来はエンジェル(天使)。中世ヨーロッパで最も重要なハーブのひとつに数えられた”西洋トウキ”です。日本で漢方に使われる当帰(Angelica sinensis)が血を補って女性の体を整えるのに対し、西洋トウキは巡らせ、温め、消化を助けることを得意とします。
特徴は、はっきりとした苦味と芳香。この苦味が胃液や胆汁の分泌を促し、消化を助け、体を内側から温める ― ヨーロッパの植物療法ではこれを「苦味強壮」と呼び、弱った体を無理なく立て直す知恵として使ってきました。
「食べたい気持ちはあるのに量が入らない」「冷えと疲れが抜けにくい」「気力が底にある」。そんな40代の日に、ロースト根小さじ1を10分蒸らして一杯。ほのかな甘みのあとにじんわり苦味が広がります。甘やかすのでも叱咤するのでもなく、静かに軸を戻す ―「ちゃんと戻っていく感覚」を思い出させてくれるハーブです。子宮の働きを賦活する可能性が報告されているため、妊娠中は避け、体調とタイミングには配慮を。
第2部 血と巡りを、澄ませる
5. ネトル ― 血液を澄ませる”緑のちから”
学名 Urtica dioica(イラクサ科)。ヨーロッパで浄血と造血の目的で用いられてきた、植物療法の”基本のハーブ”です。葉にはヘモグロビンと構造が似ているといわれるクロロフィル(葉緑素)のほか、鉄分・ビタミンC・フラボノイド・ミネラルがバランスよく含まれています。
「以前より疲れやすい」「立ちくらみや冷え」「肌のくすみ」「アレルギー症状が出やすい」― こうした40代の変化は、血液の質や巡りと関わっていることも少なくないとされます。ネトルは伝統的に、鉄不足のサポートや花粉症などのアレルギー予防、老廃物の排出を助ける目的で使われてきました。ドイツでは春先の体調管理の定番でもあります。
小さじ1に熱湯200ml、フタをして10分。青々とした香りとほんのり草の風味で、クセは少なめ。即効性を求めるのではなく、続けることで「気づけば調子がいい」。そんな変化を大切にしたい40代に、よく似合う一杯です。利尿作用があるため摂りすぎには注意を。
6. ハイビスカス ― 40代の自然派スポーツドリンク
学名 Hibiscus sabdariffa(アオイ科)。鮮やかなルビー色と爽やかな酸味が特徴で、クエン酸などの有機酸とミネラルを豊富に含みます。エネルギー代謝のサポートや運動後の疲労回復に役立つとされ、かつて東京オリンピックのマラソン選手団が水分補給に取り入れていたことでも知られる、まさに”植物がつくるスポーツドリンク”です。
私はジムでトレーニングをするとき、冷やしたハイビスカスティーをボトルに入れて持っていきます。40代になると「運動後の疲れが抜けにくい」「汗をかいたあと、どっとだるさが残る」と感じることが増えますが、この酸味の一杯は、がんばる私を支えるのではなく、回復する私を助けてくれる感覚があります。
酸味が強いと感じたらローズヒップとのブレンドを。天然のビタミンCも補えて、美容と水分補給の両方を叶える一杯になります。胃が弱い方は薄めから、1日1〜2杯を目安に。
7. ルイボス ― 不老長寿のアフリカ茶
学名 Aspalathus linearis(マメ科)。南アフリカのシェダーバーク山脈周辺にだけ自生する希少な植物で、先住民たちが「不老長寿のお茶」として愛飲してきました。強力な抗酸化成分のアスパラチンやルテオリンを含み、血の巡りや新陳代謝を支え、冷え・便秘・活力不足といった40代以降の悩みに寄り添うとされています。アレルギー症状の緩和に関する報告もあります。
なによりカフェインフリーで、時間を選ばず飲めるのが日常茶としての強み。私は毎日マイボトルに淹れて外出先でこまめに水分補給し、夜は土瓶でゆっくり沸かした温かい一杯を「眠る前の時間」の習慣にしています。温かさが体を芯からほぐし、穏やかな眠りへ導いてくれます。
季節の変わり目や疲れを感じたとき、いつものお茶をルイボスに替えてみる ― それだけで始められる、いちばんハードルの低い”緑の処方箋”かもしれません。
第3部 透明感と、美しさの土台を育てる
8. ザクロ×ラズベリーリーフ ― エラグ酸で、内側から透明感
年齢とともに気になり始める、くすみやシミ、乾燥。そこで注目したいのが、美白ケアに役立つとされるポリフェノール「エラグ酸」です。強力な抗酸化作用を持ち、紫外線などの外的ストレスから肌を守り、メラニンの生成を抑えることで、シミやくすみの予防に役立つとされています。
このエラグ酸を豊富に含むのが、ザクロとラズベリーリーフ。私はザクロジュースとラズベリーリーフティーを交互に楽しむことで、飽きずにエラグ酸の恩恵を取り入れています。ラズベリーリーフティーはやさしい酸味と草花の香りで、夕方や寝る前のリラックスタイムにぴったり。即効性はありませんが、「内側からケアしている」という安心感が、肌と心のバランスを整えてくれます。
9. ヒース ― くすみに寄り添う、アルブチンの花
アルプスの荒野に揺れる小さな花、ヒース(ツツジ科)。この可憐な花には「アルブチン」という成分が含まれ、くすみやシミの原因となるメラニン生成に関わる酵素(チロシナーゼ)の働きをやさしく抑えてくれるとされています。加齢とともに気になる色素沈着に、自然の透明感を添えてくれる存在です。
もうひとつの顔が、泌尿器ケア。膀胱炎や尿道炎の予防を支えるハーブとしても知られ、利尿作用のあるリンデンや抗菌作用を持つタイムとのブレンドで、更年期世代の「冷え」「むくみ」による不調にもやさしく働きかけてくれます。
飲むだけでなく、関節のこわばりには足浴や手浴などの部分浴もおすすめ。一日の終わり、静かにお湯に手足を浸す時間は、バタバタとした日常にひとすじの余白をつくる”私の時間”にもなります。
10. ホーステイル(スギナ) ― 肌・髪・爪を育てる、シリカの野草
日本では「スギナ」として知られる、どこにでも生えていそうな野草。でもその姿からは想像できないほど、美容を支える栄養が詰まっています。注目は「シリカ(ケイ素)」。コラーゲンの生成をサポートし、肌の弾力、髪のツヤ、爪のしなやかさを助けてくれる、40代にうれしいミネラルです。フラボノイドやサポニン、カリウムもバランスよく含みます。
髪のボリューム、割れやすくなった爪、物足りなくなった肌のハリ ― そんな小さなサインを感じていた私が始めたのは、乾燥スギナ小さじ1を5〜10分蒸らすだけのシンプルなティー。飲み始めて2〜3週間経った頃、ふと鏡を見て「肌が明るく見える」と感じ、悩んでいた爪の割れも気にならなくなってきました。劇的ではないけれど、確かな手応え。最近はスギナパウダーをヨーグルトやスムージーに混ぜることもあります。気負わず続けられることが、長く付き合える理由です。
11. 紫根 ― 手作りオイルで、肌と心を整える
最後は、飲むハーブではなく”作るハーブ”を。漢方の外用薬「紫雲膏」の原料として知られる紫根(しこん)は、ムラサキ科の植物の根で、赤紫色の色素「シコニン」を豊富に含みます。シコニンには抗炎症・抗菌・肌の修復を助ける働きがあるとされ、肌荒れや日焼け後のケアにぴったりの植物成分です。
家族の日焼けをきっかけに「できるだけ自然のものでケアしたい」と思った私は、紫根オイルを手作りしてみました。作り方は、刻んだ乾燥紫根約5gとマカダミアナッツオイル50mlを約60℃で10〜15分ゆっくり湯煎し、冷まして遮光瓶へ。冷暗所に2〜3週間置いてガーゼで濾せば完成です(赤紫色は衣服に色移りしやすいのでご注意を)。
日焼けした家族の肌に塗ると数日で赤みがやわらぎ、私自身は夜のスキンケアに数滴。翌朝の肌がしっとり落ち着いて、心まで穏やかに整う感覚があります。一滴一滴を丁寧に抽出する過程そのものが、慌ただしい日々の中で静けさを取り戻す「整える時間」でした。アレルギーのある方は必ずパッチテストを。紫根は希少な植物なので、信頼できる専門店から購入し、1〜2ヶ月で使い切ってください。
使うときの共通の注意点
- 妊娠中・授乳中の方は、自己判断で使わず必ず医師や専門家に相談を(特にラズベリーリーフ・サフラン・アンジェリカは注意が必要です)
- 持病のある方、薬を服用中の方も、事前に相談を
- 1日1〜2杯を目安に、少量から。体に合わないと感じたらすぐ中止
- 品質の確かな、信頼できるお店のハーブを選ぶこと
まとめ ― 巡りを整えることは、自分を育てること
11のハーブを並べてみて思うのは、女性の体のケアとは「症状を消すこと」ではなく、巡りを整えて、育てていくことなのだということです。
ゆらぎの日にはブレンドティーで心をなだめ、ラズベリーリーフとサフランで月のリズムに寄り添う。ネトルとハイビスカスとルイボスで血と巡りを澄ませ、エラグ酸やアルブチン、シリカの力で透明感の土台を育て、紫根オイルで肌と心をいたわる。
どれも、劇的な変化をくれるものではありません。でも「今日はちょっと楽だった」「肌が明るく見える気がする」― その小さな積み重ねが、40代の私を確かに支えてくれています。
毎日の中で何気なく選ぶものたちが、やがて私という人を形づくっていく。あなたの今日の一杯が、その”自分を育てる選択”のひとつになりますように。
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